3年12班の愉快な面々 14

翌朝の教室は異様な空気が漂っていた。男子達は一様に下を向き唇を噛み締める。女子のほとんどはハンカチで目頭を押さえている。

Gチは静かにSスの、主人のいない机を見た。自分の目標に向かって突き進むSスの後ろ姿が目に焼き付いている。

Gチは拳を震わせた。

先生が入って来た。寝不足なのか悔しさなのか目を真っ赤にして話し出した。「皆も知ってる通り、昨日の夕方国鉄池袋駅で、我がクラスのSス君が暴行される事件がありました…」

先生の声が震えている。「Sスは幸い意識はしっかりしてますが、顔の腫れが酷く、顔の切り傷、全身の打撲とで当分の間は病院に入院して様子を見る事になりました。」

C子が「先生、病院はどこですか?」と聞いた。「池袋の〇〇総合病院のA棟の〇〇号室だ。時間のある者は見舞いに行ってあげる様に!」

(私を助ける為にSスは犠牲になったんだ…ごめんね…)ス◯は何度も謝った。

ホームで倒れてるSスを抱き抱えて「Sス、Sス!」と呼び続けるス◯に「大丈夫、救急車と駅員さん呼んだから。」と優しく声を掛けてくれるサラリーマンがいた。後で聞いた話しだが、このサラリーマンが袋叩きにあってるSスを助けてくれたらしい。駅員はすでに警察と学校にも連絡してくれていた。

駅前の交番から警察官が駆けつけた。救急隊員の担架に乗せられたSスは目を覚まし辺りを見回した。そして傍らで心配そうに目を真っ赤に腫らしたス◯を見付けると、安堵の表情を浮かべ「大丈夫だった?」とかすれた声で言葉をかけた。

「…」
答えようとしたが上手く声が出ない。ス◯は大きく、大きく頷いた。涙が溢れた。

Sスはそのまま救急車に乗って病院へ搬送された。付き添いはス◯とサラリーマンが付いて来てくれた。しばらくして学校から担任の金先生と教務部長が駆けつけた。救急治療室に入り顔のレントゲンや脳波の検査など一通りの検査を終えて病室へ移動した。

落ち着いた所へ警察官が入って来て事情聴取を始めた。名前と住所から始まり学校名を聞いて来た。

なんで喧嘩になったのか?相手は何人いたのか?どこの学生か?と質問が続きどちらが最初に手を出したのか?等々聴取を進めて行った。下を向いて淡々と答えていたSスだったが、ある質問に警察官の顔を見上げた。それは制服の警官の後ろに立ってた私服警官が放った質問だった。

「朝鮮学校の学生なら、外登持ってるよね?見せて。」それを聞いた先生は色めき立った。「あなたね!この状態を見たら、被害者がどちらか明らかでしょう?何故早く加害者を探さないんだ!それとベッドに横たわる患者に外登を見せろとは何事だ!」

「まだ被害者、加害者ははっきりしてない。この子が加害者なのかも知れないから一応聞いているんだ。」

それを聞いていたサラリーマンが声を荒げて割って入った。「おまわりさん、何を言ってるんだ。私は最初から見ていた。逃げた真っ黒な学生服を着た一団が、5〜6人いたかな?その子らがこの子とそこの女の子にイチャモンをつけて喧嘩をふっかけたんですよ。この男の子は勇敢にも女の子を守るため体を張ったんだ!この子が加害者の訳無いじゃないか!その言い方を聞くと、わざとこの子を悪者にしようとしてる様に見えるが、違うのか!」

「そ、そんな事ないですよ。考えすぎです!」と思わぬ反撃を受けた私服警官は言葉を濁す。そこにSスの両親が駆けつけた。「ソンセンニン、ご迷惑かけてすみません。」と両親は頭を下げてベッドに横たわる息子の変わり果てた姿を見て言葉を失った。オモニはその場に泣き崩れた。

その姿を見たサラリーマンは改めて湧き上がる怒りに震えながら「とにかく一刻も早く犯人を探して下さい。」と言った。私服警官はそれ以上話をせずに「後日報告します。」と言う言葉を残してその場を離れた。

「개자식、ふざけてる!」先生は怒りを露わにした。そしてサラリーマンに「どうもありがとうございます。我々の言いたい事を言って貰えました。」と手を握った。「いえいえ、当然の事をしただけですよ。被害者に対してあの対応はおかしい!腹立たしいです。」と憤った。

そして「お父さんとお母さんですか?立派な息子さんですね。自分の体を張って女の子を守る。いや〜男の鑑です。素晴らしい!」とアボジの手を握ってSスを褒めた。アボジは「ありがとうございます」と恐縮しながら頭を下げた。サラリーマンは「何かあったら連絡下さい。連絡先はここに書いてありますから…」と名刺を置いて帰って行った。(日本人にもいい人はいるんだ。)ス◯はもう一度頭を下げた。

「ス◯、あなたも遅いから帰りなさい。ここはご両親と先生が見てるから」と金先生が言った。「でも…Sスが心配だし…」と話すとSスが「もう大丈夫。ありがとう。気を付けてな。」とニッコリ笑いながら言った。「さぁ、行こうか」と教務部長が肩を叩いて「駅まで送るから」と歩き出した。

ス◯はしょうがなくご両親に挨拶をして先生の後に続いた…

9 COMMENTS

인류학자

なかなかバランス良いストーリー展開ですね。日本人にも良心を持った人がいるという事実をきちんと挿入しながら、私服の卑劣さを浮上させる。いいですね。国家権力の手先になる者と、それに対して個人のインテグリテイで立ち向かう。ここで国士舘は朝鮮人を日本社会から一掃しようとする右翼イデオロギーを身体化しているんですね。我ら12班の主人公たちはそれに対して、どういう立場に置かれているのでしょうか。ただ、たまたま在日として生まれてきたという、歴史の偶然の犠牲者になるのでしょうか。それともこの事件が自己のアイデンテイテイーを形成するための布石になるのでしょうか。

浅草物語

友人홍○○は、池袋アダミスアップルにて、◯袋◯察に大量に補導され、一人で警◯を殴り飛ばし、自転車を投げて脱出しました、まさにドブね◯みの凶暴さ、今は組織の幹部(^^)、小1から高3まで、一組を貫いたギネスの持主、浅草六区の星です👍

匿名

そうです❗偶然です。私もハッチャさんと同じ事を書こうとしてました😃💦インテグリティが大事なんです😊💧Sスの全快を祈ってます⤴️

인류학자

嬉しいですね、私と匿名さんは、心が繋がっているんですね! 自分の人生しっかり生きるためには、やっぱりインテグリティが第一条件でしょうね。こういう私も、まだだめです。ただ、今の日本社会に、例えばこのような場面で、朝鮮高校生を助けてくれる日本人がいるかどうかは、疑問ですね。

今朝通勤電車の中で読みました。自然と目頭が熱くなり流れ落ちそうな涙を我慢するのが精一杯でした。
あの時代頻繁に起こった事ですね。女子学生のチマをめくって冷やかす国士舘の学生めがけ隣のホームから駆けつけやっつけたとか、先輩達には耳を切られた、刺された等の話も良く聞きましたね。
色々な矛盾を感じ大きな志を持ったSス君、この試練を乗り越え立派に成長する事を祈りつつ今後の展開を見守りたいと思います。
인류학자さんは学者さんだけ有ってコメントに出てくる単語が少し難しく、Google先生に助けてもらいながら読んでいます。

浅草物語さん、홍さんはそんなにワイルドな学生さんだったんですね?
今では会うと笑顔で話掛けてくれる優しいおじさんですが。やはり人間若い内に酸いも甘いも経験した方が良いって事ですね。
武勇伝もっと聞きたいですね。

인류학자

す さん、
すみません、これで子供の養育費と、一家の生計を立てているものですから、ついジャーゴンが出ました。私も、実はGoogleに頼っています。☺

匿名

す、真面目で真っ直ぐな人柄は昔のままなんだね🍀面々のお話しを聞いて実際あった事と照らし合わせて泣きそうになるなんて・・。なんでも軽く受け止める悪い癖の私、恥ずかし😵💧次の回から正座して見ます。🍀😌❣️

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